旅行保険付帯クレジットカード選定の要点
クレジットカードに付帯する旅行保険は、多くの旅行者にとって重要なセーフティネットです。しかし、その内容はカードによって大きく異なり、補償を有効にするための条件も多様化しています。最適な一枚を選ぶためには、単に補償額の大小を比較するだけでなく、その背景にある仕組みや本当に重要な補償項目を深く理解することが不可欠です。本セクションでは、カード選定における最も重要な基礎知識を解説します。
「自動付帯」 vs. 「利用付帯」:補償を有効にするための絶対条件
クレジットカードの旅行保険が適用されるには、「自動付帯」と「利用付帯」という二つの主要な条件が存在します。この違いを理解することは、カード選定の第一歩であり、万が一の際に補償を受けられるかどうかを左右する決定的な要素です。
自動付帯(Automatic Coverage)
自動付帯とは、そのクレジットカードを保有しているだけで、旅行保険が自動的に適用される仕組みを指します [1, 2]。特別な手続きやカード決済は不要で、旅行に携帯するだけで補償の対象となるため、利用者にとって最も利便性が高く、安心感のある条件です [3, 4]。かつては多くのカードがこの条件を採用していました。
利用付帯(Usage-Based Coverage)
利用付帯とは、旅行に関連する特定の費用(公共交通機関の乗車券、パッケージツアーの代金など)をそのクレジットカードで支払うことによって、初めて保険が有効になる仕組みです [5, 6]。どの費用が対象となるかはカード発行会社によって厳密に定められており、例えば「日本出国前に航空券代金を決済した場合」や「募集型企画旅行の代金を決済した場合」といった具体的な条件を満たす必要があります [7, 8, 9, 10]。
近年、カード業界全体で顕著な傾向として、従来の「自動付帯」から「利用付帯」への移行が進んでいます。例えば、かつては自動付帯の代表格として旅行者に絶大な支持を得ていたエポスカードも、2023年10月1日出発の旅行から利用付帯へと条件を変更しました [11, 12]。同様に、三井住友カードも多くの券種で利用付帯を基本としています [6]。
この業界全体の変化には、カード発行会社側の財務的・戦略的な理由があります。自動付帯は、カード会員全員をリスクプールに含めるため、保険会社への支払いコストが増大します。特に海外での医療費高騰などを背景に、このコスト負担は年々重くなっています。利用付帯へ移行することで、カード会社はリスク対象を「実際に旅行し、かつ自社カードを利用する顧客」に限定でき、リスクを低減できます。同時に、カード決済を促すことで加盟店手数料収入の増加も見込めます。
この変化は、消費者に新たな負担を強いることになります。単にカードで支払うだけでなく、保険金請求時にはその支払いを証明する書類(レシート、カード利用明細など)の保管が必須となります [4, 6, 10, 12]。これにより、「持っているだけで安心」という自動付帯の最大のメリットは失われつつあります。したがって、カードを選ぶ際には、必ず公式サイトなどで最新の付帯条件を確認することが極めて重要です。
主要補償項目の徹底解説:海外で本当に重要となる補償とは
クレジットカードの広告で目にする「海外旅行保険 最高1億円」といったキャッチコピーは、非常に魅力的です。しかし、この金額がどの項目を指しているのかを正確に理解しなければ、カードの真の価値を見誤る可能性があります。
この「最高1億円」という数字は、ほぼ例外なく傷害死亡・後遺障害の補償額を指しています [1, 13, 14, 15]。これは旅行中の事故が原因で死亡した場合や、重篤な後遺障害が残った場合に支払われるものですが、統計的に見て、この補償が請求される頻度は高くありません。
旅行者が現実に直面する可能性が最も高く、かつ経済的打撃が大きいリスクは、傷害・疾病治療費用(Injury & Illness Medical Expenses)です。海外、特にアメリカなどの医療費は日本と比較して桁違いに高額であり、簡単な診察や処置でも数十万円、入院や手術となれば数百万円以上の請求が発生することも珍しくありません [9]。この治療費用をどれだけカバーできるかが、旅行保険の価値を測る上で最も重要な指標となります。カードのランクによって、この補償額には明確な差が見られます。
- 年会費無料・低コストカード: 200万円~300万円程度 [5, 16, 17]
- ゴールドカード: 300万円~500万円程度 [18, 19, 20]
- プラチナカード: 500万円~1,000万円程度 [15, 21, 22]
マーケティング上の高額な死亡補償額に惑わされることなく、この傷害・疾病治療費用の補償額を最優先に確認することが、賢明なカード選択の鍵となります。
その他にも、以下の補償項目が重要です。
- 賠償責任(Personal Liability): 旅行先で誤って他人に怪我をさせてしまったり、ホテルの備品を壊してしまったりした場合の損害賠償を補償します [5, 19, 22, 23]。
- 携行品損害(Baggage/Personal Effects Damage): カメラや衣類など、身の回りの持ち物が盗難に遭ったり、破損したりした場合の損害を補償します。通常、1事故あたり3,000円程度の自己負担額が設定されています [8, 19, 22, 24, 25]。
- 救援者費用(Rescuer Expenses): 旅行先で本人が入院した場合などに、日本から家族が駆けつけるための渡航費や宿泊費などを補償します [17, 18, 19, 22, 25]。
これらの補償内容を総合的に評価し、自身の旅行スタイルや渡航先に合わせて、最も実践的なリスクをカバーできるカードを選ぶことが求められます。
家族特約と航空機遅延保険:見落とされがちな重要補償
旅行保険の評価では、本人への補償だけでなく、同行する家族や予期せぬトラブルへの備えも重要です。特に「家族特約」と「航空機遅延保険」は、その有無や内容がカードの価値を大きく左右するにもかかわらず、見落とされがちな項目です。
家族特約(Family Rider)
家族特約は、カード本会員だけでなく、その家族も補償の対象とする重要なサービスです。これにより、自身のカードを持たない子供や配偶者も保険の恩恵を受けることができます。しかし、ここで注意すべきは、「家族」の定義がカード発行会社やカードのランクによって大きく異なるという点です。
この定義の不統一は、利用者が陥りやすい重大な落とし穴です。例えば、三井住友カード プラチナのような上位カードでは、配偶者や生計を共にする同居の親族(年齢制限なし)まで広くカバーする場合があります [26, 27]。一方で、多くのゴールドカード(例:JCBゴールド、三井住友カード ゴールド)では、対象が「19歳未満の子供」に限定されることが一般的です [8, 27, 28]。さらに、エポスカードの一般カードのように、家族特約そのものが付帯していないケースもあります [23, 29]。
このように、「家族特約あり」という表記だけを鵜呑みにすると、いざという時に配偶者や親が補償対象外であることに気づく可能性があります。家族旅行を計画する際には、必ず各カードの保険規約(保険のしおり)を確認し、補償対象となる家族の範囲を正確に把握することが不可欠です。
航空機遅延保険(Flight Delay Insurance)
航空機遅延保険は、搭乗予定の飛行機が大幅に遅延・欠航した場合や、預けた手荷物が紛失・遅延した場合(ロストバゲージ)に発生する追加の食事代や宿泊費などを補償するものです [22, 30]。
この保険は、特に乗り継ぎの多い旅行や、天候の影響を受けやすい地域への渡航、そして時間に制約のあるビジネス出張などで真価を発揮します。この補償は一般的にゴールドカード以上のステータスカードに付帯しており [1, 14, 23, 31, 32, 33]、年会費無料のカード(例:楽天カード)には付帯していないことがほとんどです [34, 35]。
頻繁に飛行機を利用する旅行者にとって、航空機遅延保険の有無は、年会費を支払ってでもゴールドカード以上を選択する十分な理由となり得ます。
【年会費・カードランク別】旅行保険付帯クレジットカード 総合比較表
ここでは、クレジットカードを「年会費無料・低コスト」「ゴールド」「プラチナ」の3つのカテゴリーに分け、それぞれの旅行保険内容と主要な特徴を詳細な表にまとめます。これにより、ご自身の予算や求める補償レベルに応じて、最適なカードを客観的に比較検討することが可能になります。
年会費無料・低コストカード 比較表
このカテゴリーのカードは、学生や初めて海外旅行に行く方、あるいは後述する「補償額の合算戦略」のために2枚目以降のカードを探している方に最適です。年会費の負担がない、または非常に低いため、コストを抑えつつ基本的な補償を確保したい場合に適しています。
カード名 | 年会費(税込) | ポイント還元率 | 海外旅行保険 付帯条件 | 海外 傷害死亡・後遺障害 | 海外 傷害・疾病治療費用 | 海外 賠償責任 | 海外 携行品損害 | 海外 救援者費用 | 国内旅行保険 | 家族特約 | 航空機遅延保険 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
エポスカード
|
無料 | 0.5% | 利用付帯 [11, 12] | 最高3,000万円 [5] | 傷害:200万円 [17] 疾病:270万円 [17] |
最高3,000万円 [23] | 20万円 [17] (自己負担3,000円) |
100万円 [17] | なし [36] | なし [23, 29] | なし [12, 37] |
楽天カード | 無料 | 1.0% | 利用付帯 [5, 9] | 最高2,000万円 [5] | 傷害:200万円 [25] 疾病:200万円 [25] |
2,000万円 [4] | 20万円 [4] (自己負担3,000円) |
200万円 [4] | なし | なし [38] | なし [34, 35] |
JCB CARD W | 無料 (39歳までに入会) | 1.0%~ | 利用付帯 [5] | 最高2,000万円 [5] | 100万円 | 2,000万円 | 20万円 (自己負担3,000円) |
100万円 | なし | なし | なし |
三井住友カード (NL) | 無料 | 0.5%~ | 利用付帯 [5, 6] | 最高2,000万円 [5, 6] | 傷害:50万円 [6] 疾病:50万円 [6] |
2,000万円 [6] | 15万円 [6] (自己負担3,000円) |
100万円 [6] | なし [39] | なし [27] | なし [39] |
学生専用ライフカード | 無料 (在学中) | 0.3%~ | 自動付帯 [3, 5] | 最高2,000万円 [5] | 200万円 | 2,000万円 | 20万円 (自己負担3,000円) |
200万円 | なし | なし | なし |
ライフカード〈旅行傷害保険付き〉 | 1,375円 (初年度無料) | 0.5%~ | 自動付帯 [18] | 最高2,000万円 [18] | 200万円 [18] | 2,000万円 | 20万円 | 200万円 [18] | 最高1,000万円 (利用付帯) [18] | なし | なし |
ゴールドカード 比較表
ゴールドカードは、年会費が発生する代わりに、一般カードよりも手厚い補償と充実した付帯サービスを提供します。特に、海外・国内の空港ラウンジ利用や航空機遅延保険が付帯することが多く、出張や旅行の頻度が高い方に適しています。
カード名 | 年会費(税込) | ポイント還元率 | 海外旅行保険 付帯条件 | 海外 傷害死亡・後遺障害 | 海外 傷害・疾病治療費用 | 海外 賠償責任 | 海外 携行品損害 | 海外 救援者費用 | 国内旅行保険 | 家族特約 | 航空機遅延保険 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
JCBゴールド | 11,000円 (初年度無料) | 0.5%~ [40] | 利用付帯 [8, 41] | 最高1億円 [8, 13] | 300万円 [8] | 1億円 [8] | 50万円 [8] (自己負担3,000円) |
400万円 [8, 20] | 最高5,000万円 (利用付帯) [8, 13] | あり (19歳未満の子) [8, 28] | あり [8, 14] |
楽天プレミアムカード | 11,000円 | 1.0%~ [13] | 自動付帯+利用付帯 [18] | 最高5,000万円 (自動付帯分4,000万円) [18] |
300万円 [18] | 3,000万円 [9] | 50万円 (自動付帯分30万円) [18] |
200万円 [18] | 最高5,000万円 (自動付帯) [18, 24] | なし (家族カード会員は対象) [38, 42] | なし [34, 35] |
dカード GOLD | 11,000円 | 1.0%~ [1] | 自動付帯+利用付帯 [1] | 最高1億円 (自動付帯分5,000万円) [1] |
300万円 | 5,000万円 | 50万円 | 200万円 | 最高5,000万円 (利用付帯) [43] | あり [18] | あり [1] |
ライフカードゴールド | 11,000円 | 0.5%~ | 自動付帯 | 最高1億円 [13] | 200万円 | 2,000万円 | 50万円 | 200万円 | 最高1億円 (自動付帯) [13] | あり | あり |
ANA JCB ワイドゴールドカード | 15,400円 | 0.5%~ [1] | 自動付帯 [44] | 最高1億円 (自動付帯分5,000万円) [1] |
300万円 | 1億円 | 50万円 (自己負担3,000円) |
400万円 | 最高5,000万円 (自動付帯) [44] | あり (19歳未満の子) | あり |
JALカード CLUB-Aゴールドカード (JCB) | 17,600円 | 1.0%~ [1] | 自動付帯+利用付帯 [20] | 最高1億円 (自動付帯分5,000万円) [20] |
300万円 [20] | 1億円 [20] | 50万円 [20] (自己負担3,000円) |
400万円 [20] | 最高5,000万円 (利用付帯) [1] | あり (19歳未満の子) [20] | あり |
プラチナカード 比較表
プラチナカードは、最上位クラスのクレジットカードであり、年会費は高額ですが、それに見合う最高水準の補償と、コンシェルジュサービスなどの特別な特典が付帯します。海外渡航が非常に多い方や、あらゆるリスクに対して万全の備えを求める方に最適です。
カード名 | 年会費(税込) | ポイント還元率 | 海外旅行保険 付帯条件 | 海外 傷害死亡・後遺障害 | 海外 傷害・疾病治療費用 | 海外 賠償責任 | 海外 携行品損害 | 海外 救援者費用 | 国内旅行保険 | 家族特約 | 航空機遅延保険 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
JCBプラチナ | 27,500円 [45] | 0.5%~ [46] | 利用付帯 [22, 32] | 最高1億円 [21, 45] | 1,000万円 [21, 22] | 1億円 [21, 22] | 100万円 [21, 22] (自己負担3,000円) |
1,000万円 [21, 47] | 最高1億円 (利用付帯) [21, 32] | あり (19歳未満の子) [21, 47] | あり [22, 32] |
三井住友カード プラチナプリファード | 33,000円 | 1.0%~ [48] | 利用付帯 [48, 49] | 最高5,000万円 [49, 50] | 500万円 [6] | 1億円 [6] | 50万円 [6] (自己負担3,000円) |
500万円 [6] | 最高5,000万円 (利用付帯) [49, 50] | あり (19歳未満の子) [6, 27] | なし [48] |
三菱UFJカード・プラチナ・アメリカン・エキスプレス®・カード | 22,000円 | 0.5%~ [1] | 自動付帯+利用付帯 [1] | 最高1億円 (自動付帯分5,000万円) [1] |
200万円 | 5,000万円 | 50万円 (自己負担3,000円) |
200万円 | 最高5,000万円 (利用付帯) [1] | あり | あり |
セゾンプラチナ・ビジネス・アメリカン・エキスプレス®・カード | 22,000円 | 0.5%~ | 自動付帯 [3] | 最高1億円 | 300万円 | 3,000万円 | 50万円 (自己負担3,000円) |
300万円 | 最高5,000万円 (自動付帯) | あり | あり |
表中の補償額は最高額を示します。詳細な条件や補償内容は各カード会社の規約をご確認ください。ポイント還元率は通常利用時のものであり、提携店やキャンペーン利用により変動します。
主要カード発行会社別 詳細分析
前セクションの比較表で示した定量的なデータに加え、各カード発行会社がどのような戦略思想に基づいて保険サービスを設計しているかを理解することは、より深いレベルでのカード選定に繋がります。ここでは、主要なカードブランドの特性を質的に分析します。
エポスカード:海外旅行者の「お守り」としての価値と近年の変更点
エポスカードは長年にわたり、海外旅行者にとって「お守り」のような存在として認識されてきました。その理由は、年会費無料でありながら、海外旅行保険が「自動付帯」で、かつ最も利用頻度の高い傷害・疾病治療費用の補償が手厚かったためです [3, 5, 16, 17]。
しかし、この状況は2023年10月1日に大きな転換点を迎えました。この日以降に出発する旅行から、保険の適用条件が「自動付帯」から「利用付帯」へと変更されたのです [11, 12]。これは、カード会員が保険を有効にするためには、事前に公共交通機関のチケットやパッケージツアーの代金をエポスカードで決済する必要があることを意味します。この変更により、かつての「持っているだけで安心」という最大の利便性は失われました。
それでもなお、エポスカードは年会費無料カードの中で依然として強力な選択肢です。利用付帯という条件付きではあるものの、傷害治療費用200万円、疾病治療費用270万円という補償額は、同クラスの他社カードと比較しても充実しています [17, 23]。ただし、一般カードには国内旅行保険や航空機遅延保険が付帯していない点には注意が必要です [12, 36, 37]。より高い補償を求める場合は、エポスゴールドカードやエポスプラチナカードへのアップグレードが選択肢となりますが、最上位のプラチナカードでさえ、国内旅行保険は利用付帯となっています [33, 51]。
楽天カード(プレミアム/ゴールド):ポイントプログラムと保険のトレードオフ
楽天カードは、楽天経済圏での高いポイント還元率を最大の武器としていますが、旅行保険の観点からは、カードのランクによってその価値が大きく異なります。
年会費無料の一般楽天カードは、利用付帯で基本的な補償が付くものの、あくまで楽天ポイントプログラムの補助的な機能と捉えるべきです [5, 9, 38]。
一方で、年会費11,000円の楽天プレミアムカードは、旅行保険において非常にユニークで優れた設計思想を持っています。このカードは、自動付帯と利用付帯を組み合わせた「ハイブリッド型」の補償を提供します。具体的には、傷害死亡・後遺障害は自動付帯で最高4,000万円、利用付帯で最高5,000万円に増額され、携行品損害も自動付帯で30万円、利用付帯で50万円に増額されます [18]。
このハイブリッドモデルの真価は、利用者にとって最も重要な補償項目が自動付帯の範囲に含まれている点にあります。傷害治療費用300万円、疾病治療費用300万円という手厚い医療補償が、カード利用の有無にかかわらず有効となるのです [18]。これにより、「うっかりカードで旅行代金を支払うのを忘れた」という利用付帯の最大のリスクを回避しつつ、高額な決済をすればさらに補償が手厚くなるという、安心とインセンティブを両立した設計になっています。このため、楽天プレミアムカードは、信頼性の高い一枚をメインカードとして持ちたい旅行者にとって、極めて有力な候補となります。
ただし、弱点も存在します。楽天カードシリーズは、ゴールドやプレミアムであっても航空機遅延保険が付帯していません [34, 35]。また、家族カード会員は補償対象となりますが、カードを持たない子供などを広くカバーする「家族特約」は付帯していないため、家族旅行での利用には注意が必要です [38, 42]。
JCBカード(ゴールド/プラチナ):プロパーカードの信頼性と補償内容の深掘り
JCBは日本唯一の国際カードブランドとして、自社で直接発行する「プロパーカード」を提供しています。これらのカードは、保険規約などの情報開示が詳細かつ透明性が高い傾向にあり、信頼性に重きを置く利用者から支持されています [8, 21]。
JCBゴールドは、かつて自動付帯でしたが、現在は海外・国内ともに利用付帯へと変更されています [8, 13, 41]。しかし、その補償内容は非常に包括的で、特に国内旅行保険(最高5,000万円)や航空機遅延保険が標準で付帯している点は大きな魅力です [8, 14]。家族特約については、対象が19歳未満の子に限定されるため、利用シーンは限られます [8, 28]。
JCBプラチナは、本格的な旅行者のための最上位カードと位置づけられます。治療費用最高1,000万円、賠償責任最高1億円といった極めて高い補償額に加え、航空機遅延保険の内容も手厚く、あらゆる事態に備えることができます [21, 22, 45]。また、年間の利用額に応じてポイント付与率が向上する「JCBスターメンバーズ」プログラムも、長期的な利用価値を高める要素となっています [52, 53, 54]。
三井住友カード(NL/ゴールド/プラチナプリファード):柔軟な保険選択と家族特約の優位性
三井住友カードは、利用者の多様なニーズに応える柔軟なサービス設計が特徴です。
年会費無料の三井住友カード(NL)は、特定のコンビニや飲食店での高いポイント還元率が魅力ですが、旅行保険は利用付帯で補償額も控えめであり、保険目的での主たる選択肢とはなりにくいでしょう [5, 6, 39]。
このカードシリーズのユニークな点は、「選べる無料保険」という制度です [6, 50, 55]。これは、標準付帯の旅行保険が不要な場合に、日常生活での個人賠償責任保険やスマートフォンの破損を補償する保険などに無料で切り替えられるという画期的なサービスです。利用者のライフスタイルに合わせて補償をカスタマイズできるこの柔軟性は、他社にはない大きな強みです。
三井住友カード プラチナプリファードは、ポイント獲得に特化したプレミアムカードです。旅行保険も最高5,000万円(利用付帯)と強力ですが [15, 48, 49]、このカードの真価は、年間の利用額に応じて付与されるボーナスポイントを含めた高い還元率にあります [56, 57]。
家族旅行を重視する利用者にとって特筆すべきは、プラチナカードの家族特約の範囲です。ゴールドカードが対象を19歳未満の子に限定しているのに対し、プラチナカードでは配偶者や生計を共にする同居の親族(年齢不問)までカバーします [26, 27]。これは、成人した子供や両親と旅行する機会が多い家庭にとって、非常に価値の高いメリットと言えます。
戦略的活用術と最終提言
これまで見てきたように、旅行保険付帯クレジットカードにはそれぞれ一長一短があり、「完璧な一枚」は存在しません。そこで重要になるのが、複数のカードを戦略的に組み合わせることで、リスクを最適にヘッジするという考え方です。本セクションでは、具体的な活用術と、旅行スタイルに応じた最終的な提言をまとめます。
補償額の合算戦略:複数枚持ちによるリスクヘッジの最適化
複数のクレジットカードを保有することで、それぞれの保険の長所を組み合わせ、補償内容を強化することが可能です [5]。しかし、全ての補償項目が単純に合算されるわけではないため、その仕組みを正確に理解する必要があります。
重要なのは、保険金の支払い方式の違いです。傷害・疾病治療費用、賠償責任、救援者費用といった項目は、「実損填補(じっそんてんぽ)」方式で支払われます [19, 58]。これは、実際に発生した損害額を上限として、複数の保険契約から按分して保険金が支払われる仕組みです。例えば、Aカードの治療費用補償が300万円、Bカードが200万円の場合、合計で500万円を上限として実際の治療費をカバーできます。
一方で、傷害死亡・後遺障害は「定額給付」方式です。この場合、複数のカードを持っていても補償額は合算されず、保有するカードの中で最も高い保険金額が支払いの上限となります。
この仕組みを理解した上で、効果的な組み合わせを考えることができます。例えば、以下のような戦略が考えられます。
- 自動付帯カードと利用付帯カードの組み合わせ:
- ベースとして、学生専用ライフカード(年会費無料で自動付帯)や楽天プレミアムカード(医療費は自動付帯)を保有し、最低限の補償を確保します。
- その上で、実際の航空券やツアー代金の支払いに、エポスカードのような利用付帯で医療補償が手厚いカードを使用します。
- これにより、万が一利用付帯の条件を満たし忘れた場合でも自動付帯のカードで最低限のリスクはカバーされ、条件を満たせば両方の補償を合算してより強固なセーフティネットを構築できます。
旅行スタイル別・最適カードの推薦
個々の旅行スタイルやニーズによって、最適なカードは異なります。以下に、具体的なケースごとの推奨モデルを提示します。
- 学生・コスト重視の旅行者向け:
- 家族旅行者向け:
- 出張など頻繁に渡航するビジネスパーソン向け:
総括:あなたの旅に最適な一枚を見つけるための最終チェックリスト
最終的に、あなたにとっての「最高のカード」は、あなた自身の旅のスタイルによって決まります。以下のチェックリストを用いてご自身のニーズを再確認し、後悔のないカード選びを行ってください。
- 付帯条件 (Activation): 「持っているだけで安心」の自動付帯が必須ですか? それとも、旅行代金の決済を忘れずに行い、利用付帯の条件を管理することに抵抗はありませんか?
- 補償内容 (Coverage): 広告の死亡補償額だけでなく、渡航先で最も現実的なリスクである傷害・疾病治療費用の金額を確認しましたか? その金額は、あなたの渡航先の医療水準に対して十分ですか?
- 同伴者 (Companions): 一人旅ですか、それとも家族と一緒ですか? カードの家族特約が、あなたの家族構成(配偶者、子供の年齢、親など)と一致していますか?
- 年会費と特典 (Fee vs. Benefits): あなたの旅行頻度や支出スタイルは、ゴールドやプラチナカードの年会費に見合うものですか? 空港ラウンジや航空機遅延保険といった追加の特典を実際に活用する機会はありますか?
- 最新情報の確認 (Verify Information): クレジットカードの保険内容は、予告なく変更される可能性があります。このレポートを参考にしつつも、最終的な申し込みの前には、必ずカード発行会社の公式サイトで最新の規約や条件をご自身の目で確認しましたか?
これらの問いに答えることで、数ある選択肢の中から、あなたの次の旅をより安全で快適なものにする、真に価値のある一枚が見つかるはずです。
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